MEMBER

2010年 中途入社

プロジェクトマネージャー

N.T.

2002年 新卒入社

I.N.

Rectangle 2029

2021年 新卒入社

K.K.

CLIENT MEMBER

株式会社豊田自動織機

Kさま

株式会社豊田自動織機

Fさま

株式会社豊田自動織機

Sさま

CHAPTER 01

プロジェクト発足の背景

空港で荷物や貨物のコンテナを牽引するトーイングトラクターにおいて、豊田自動織機は国内シェアのほとんどを握っています※1。そのお客様のひとつである全日本空輸株式会社(以下、ANA)は、コロナ禍で大幅に減少した生産年齢人口、コロナ禍などを背景としたグランドハンドリング要員が不足する状況が続いており、省人化・自動化を喫緊の経営課題として掲げていました。一方、国土交通省は東京国際空港(以下、羽田空港)を日本の先端技術の発信拠点と位置づけ、空港制限区域内での自動運転の実現を強力に推進していました。両者の課題とビジョンが合致する形で2017年にプロジェクトがスタートし、2021年よりTIISが参画しています。

・ミックストラフィックへの対応:有人車両と無人車両が混在する条件下におけるレベル4の安全性の担保
・高度なセキュリティ要件:空港インフラとして求められる厳格な基準への適合と第三者チェック体制の構築
・通信環境の安定確保:旅客集中時のネットワーク混雑下でも車両との通信を途切れさせないインフラ設計
・海外開発拠点との協業:オランダのT-Hive(TIISと同じくTICOの子会社)との共同開発体制の構築

レベル3自動化(有人)の1台走行から始まり、レベル4自動化(無人)の複数台走行実現に至るまでに、多くの課題を乗り越えてきましたが、とくにレベル4の実現では複数台を制御し、空港の管制システムや信号機と連携させる上位システムの開発は別の専門性が求められました。そこで、TIISとオランダの自動化ソフトウェア会社T-Hiveが参画し、3社体制で本プロジェクトに臨みました。

・Fleet Management System(FMS)の開発:複数台の自動運転車両への搬送指示・運行管理を一元化する上位システムを構築
・レーンの動的割り当て機能:自動トーイングトラクターの出発・到着レーンの空き状況に応じたリアルタイム自動割り当てを実現
・信号機制御との自動連動:信号機設置に際し、有人車両との安全な合流を制御するロジックを設計・実装
・空港セキュリティ基準への適合:高度なセキュリティ要件を満たすインフラ設計と第三者機関による検証体制を構築
・国内初※2の空港制限区域内レベル4実用化:羽田空港での完全無人貨物搬送を国内線定期便で運用開始

※1、※2:TIIS調べ

CHAPTER 02

本プロジェクトの経緯について教えてください

Kさま

最初の実証実験は小規模空港である佐賀国際空港でおこない、そこから中部国際空港を経て羽田空港のプロジェクトがスタートしました。羽田空港は、世界有数の過密空港で、拡張の余地が少ないため、有人車両が走行する既存の道路に無人車両を走行させる「ミックストラフィック」が前提となります。そうした制約の中でレベル4を実現するというのは、桁違いの難易度でした。

Fさま

レベル3からレベル4への移行は、単なるバージョンアップではありません。レベル3は人が乗っていますが、レベル4は完全な無人ですのですべてシステムが責任を持つ必要があります。飛行機のすぐ横を無人の車両が走るという責任の重さは、非常に大きなプレッシャーでした。

Sさま

セキュリティ面においても空港は特殊な環境です。空港や国土交通省が求める極めて高いセキュリティ基準をクリアすることはプロジェクト成立の前提条件で、それらをクリアするための工夫やチェックを行いました。そうした面においてもTIISさんの存在は不可欠でした。

N.T.

レベル4では異常検知も遠隔監視も自動停止も、すべてをシステム側で担保しなければなりませんし、安全基準が高いほどFMSに求められる堅牢さも跳ね上がります。本プロジェクトの実証実験がレベル4に引き上がるタイミングで、TIISは、管制システムとの接続、信号機との連動、通信インフラの安定確保など「車両の外側」で解決すべき課題を引き受ける立場として加わることになりました。

CHAPTER 03

技術的課題をどのようにクリアしていきましたか

K.K.

技術的に難しかったのは、自動トーイングトラクターの出発・到着レーンの動的割り当てです。自動トーイングトラクターが走行できるレーンは複数あるのですが、どこが空いているかは直前にならないと判明せず、飛行機の状況次第で刻々と変わります。そうした状況変化に臨機応変に対応するため、作業者がタブレットで「今から出発します」と入力した瞬間に、空いたレーンへリアルタイムで割り当てる仕組みをFMSで実現しました。空港の貨物搬送はスピードが命で、システムが原因で遅延すれば、貨物の到着が遅れ、最悪フライトに影響してしまうプレッシャーがありました。

Fさま

信号機の設計も大きな課題でした。走行経路上に信号機を設置すること自体、空港では初めてのこと。信号交差点を自動車両が実際にどう通過し、異常時にどう復旧するかは、国交省様、ANA様が持つ空港の知見と我々が持つ自動車両の知見が必要になります。空港の運用要件、信号機そのものの技術的制約、国交省の安全基準。どれも譲れない条件のもとさまざまな検証を現場で繰り返し、現在の方法に辿り着きました。

K.K.

当初は実物の信号機がなかったので、信号機がこう動くはずだという仕様書をもとにエミュレーターを自作し、それを使ってFMSと信号機管理システムの通信テストを何度もおこない品質を積み上げていきました。

I.N.

T-Hiveとの協業にも独特の難しさがありました。FMSの基盤はオランダのT-Hiveが持つ技術を使っているのですが、開発の進め方が日本とはかなり違います。向こうは個人の裁量が大きくて、各自が自分の領域に責任を持ち、最後に成果を合わせるスタイル。日本のように上司の承認を重ねて進めるプロセスとは根本的に異なるので大変だったと思いますが、K.K.がオランダに3ヶ月単身で入り込んで、その溝を埋めてくれました。

K.K.

オランダ側から「なぜそこまで細かくやるんだ」と言われることもあれば、こちらから「そこは粗すぎないか」と指摘することもあって、毎日が刺激的でした。現地では彼らの開発環境を直に見ることができ、シミュレーションの使い方やテストの自動化など学びも非常に多かったです。そうした知見は持ち帰って、日本側の開発にも取り入れています。

Kさま

こだわりすぎだと指摘されたこともあったようですが、そこはトヨタブランドとして背負っているものがあります。安全・安心に対する姿勢は絶対に妥協しない。丁寧に説明し、伝えるべきことを伝え続けた結果が、今回の品質につながったと思っています。

N.T.

その妥協しない姿勢には、こちらも鍛えられました。TIISにとっては豊田自動織機の製品開発に深く入り込む初めてのケースでしたし、ハードとソフトで担当部署がきっちり分かれている中で、どこまでがソフトの責任でどこからがハードの責任かという線引きは常に議論になりました。羽田空港に何ヶ月もこもって毎日顔を突き合わせる中で、少しずつ互いの考え方や事情が見えるようになり、ベンダーと発注者ではなく一つのチームとして動けるようになったとの実感があります。

Fさま

対等に物を言える空気がつくれたのは、このプロジェクトにとって一番の成果かもしれません。同じグループ会社の中で、立場を超えてフラットに議論できる関係をつくることは簡単ではありません。開発の分担について役割を明確にしながら一体感を持って取り組むことができたのは、プロジェクトを円滑に進めるうえでも非常に重要だったと思います。

CHAPTER 04

このプロジェクトで得たものと、今後見据えていることは

N.T.

本番稼働直前、品質をめぐってかなり厳しい議論がありました。内部的に残っている課題の優先度をどうするか。お互いにプライドを持って品質を追求しているからこそぶつかるし、きつい言葉が出た場面もありました。とはいえ結果として立ち上がったシステムには目立った不具合がほとんどなく、あの緊張感の中で妥協しなかったことが、品質に直結したと思っています。

Sさま

TIISには開発プロセスの整備やテストの自動化でもずいぶん助けてもらいました。開発速度を上げるための仕組みづくりは、このプロジェクトに限らず今後の財産になるはずです。T-Hiveとの納期交渉でもN.T.さんが即座に海外に飛んでくれて、開発チームの中心として3社をまとめる役割を果たしてくれました。

Kさま

今回の経験は、ハードとソフトの融合がこれからのビジネスの核になるということを組織の中に示した事例だと思います。豊田自動織機はトヨタグループの中でフォークリフトをはじめとするハードのメーカーとして歩んできましたが、もはやハードだけでは顧客の課題を解決できない時代が来ています。DXやIoTの技術を持つTIISとの掛け合わせで初めて実現できたこのソリューションは今後も続けていかなければならないし、他の領域にも広げていけると確信しています。

K.K.

空港・国土交通省との連携、T-Hiveとのグローバルな協業、自動運転制御の技術。どれもTIISにとっては初めてだらけのプロジェクトでした。個人としても非常に成長を感じていますし、ここで学んだノウハウを活かしながら、他のプロジェクトにも挑戦したいですね。

I.N.

空港は利用するだけでは見えない世界が広がっています。裏側ではものすごい数の会社と人が連携して、乗客の荷物がベルトコンベアに出てくるまでのすべてが計算し尽くされている。その一端を自分たちのシステムで支えているという実感は、何物にも代えがたいですね。

Kさま

今回つくり上げた仕組みは羽田だけのものではなく、豊田自動織機のトーイングトラクターが動いている場所すべてが次のフィールドになり得ると考えていますし、ヨーロッパや北米など海外も視野に入れています。開発中は本当にさまざまな苦労がありましたが、努力を重ねて、みんなで汗をかいてつくったものは簡単には真似できません。それこそが他社と差別化できる源泉であり、これからもTIISと協業していきたい理由のひとつです。

N.T.

TIISにとっても、このプロジェクトは新しい領域に一歩を踏み出す転機となりました。豊田自動織機というハードメーカーのグループ会社だからこそ関われるフィールドがあり、そこで積み上げた実績が次のチャレンジにつながるのだと実感しています。このチームで、世界に向けた挑戦をしていきたいですね!