MEMBER

2012年 中途入社

プロジェクトリーダー

F.H.

2024年 中途入社

K.H.

2024年 中途入社

M.K.

CHAPTER 01

プロジェクト発足の背景

物流・製造現場における労働力不足や熟練技術の継承難が深刻化する中、豊田自動織機の研究開発部門では、人とロボットが同じ空間で安全に協働する新たな搬送コンセプトに取り組んでいます。2022年の社内展示で有線式の二輪搬送システムが発表され、その技術を発展させる形でコンセプトモデル「LEAN」の開発プロジェクトが始動。TIISは有線モデルの段階からソフトウェア開発を担っています。

1. 二輪走行による省スペース設計
・従来のAGV(無人搬送車)が通れない狭い通路での搬送を可能にする、専有面積を最小化したロボット構造
2. 人との安全な協調動作
・人が触れた際のわずかな力を姿勢変化から検知し、減速・停止する安全制御の実現
3. システムアーキテクチャの改良
・通信を有線から無線へ、走行をラインの上をなぞるライントレース方式から、車輪の回転量で自己位置を推定するオドメトリ方式へ全面転換
4. 展示会でのライブデモンストレーション
・Japan Mobility Show 2025のステージショーで、人とロボットが協調して荷物を運ぶシーンを来場者に体感してもらうこと

今回のゴールは、2025年10月に開催されたJapan Mobility Show 2025で「人とロボットが自然に協働する未来」を来場者に体感してもらうことでした。有線から無線への通信刷新、MMI(マンマシンインターフェース)の再設計、姿勢制御の高度化といった技術課題を、本番用の実機1台のみという制約下で同時に進める必要があり、TIISはソフトウェア全領域においてコンセプトの具体化からシステム実装までを一貫して推進しました。

1. ソフトウェアアーキテクチャの設計・実装
・複数のセンサーデバイスやモーター制御を統合するシステムI/Fの構築
2. オドメトリ運転指令演算の開発
・自己位置推定に基づく自律走行を実現する制御ロジックの新規開発
3. MMI(マンマシンインターフェース)の刷新
・操作性と安全性を両立する新しいユーザーインターフェースの設計・実装
4. アジャイル開発・TDDの導入
・実機1台という制約下で安全を担保しながら開発スピードを最大化する開発プロセスの確立
5. 展示会場での無線通信設計
・他出展者との電波干渉リスクを考慮した、安定通信を確保するインフラ設計

CHAPTER 02

このプロジェクトに参加した経緯と、それぞれの役割を教えてください

F.H.

私はLEANの前身にあたる有線モデルの頃からこのテーマに関わっていました。2022年に豊田自動織機の社内展示で発表された二輪搬送システムの検証にも参加していたので、その延長線上でリーダーを任されたという経緯です。システムI/Fの設計やソフトウェアアーキテクチャの構築が主な担当ですが、実質的にはソフトウェア領域全体の技術判断を担うことになりました。プロジェクトの規模に対して開発期間がかなり短かったこともあり、自分がまずシステム全体の構成を先回りして整理し、そこにメンバーを巻き込んでいく進め方を取りました。

M.K.

もともとは別チームでモデルベース開発をやっていたのですが、LEANのチームが人手不足だということでヘルプ要員として加わり、そのまま正式にこのチームに所属することになりました。前世代のロボットはラインの上をなぞって走るライントレース方式だったのに対し、LEANは車輪の回転量などから自己位置を推定するオドメトリ方式への転換が求められていました。ロボットの自律走行に関わる分野は初めてだったため、最初はその仕組み自体のイメージがなかなか掴めなかったのが正直なところです。
Rectangle 2054

K.H.

私は前職で操作系の組み込み開発を担当していました。TIISに入社後はモーター関連の試験業務に携わったのち、本プロジェクトに合流しました。組み込み開発の経験はありましたが、動くモノのソフトウェア、特にロボット制御は未経験で、開発途中の状態から入ったためすでに走っている設計思想やコードを理解するところから始める必要がありました。

CHAPTER 03

技術的に難しかったのはどのような点でしたか

F.H.

もっとも苦労したのは、製品としての安全性と開発プロセスの安全性を同時に確保することです。展示会までの限られた期間で、有線から無線への移行、ユーザーインターフェースの刷新、MMI(マンマシンインターフェース)の変更といった大きな技術課題を並行して進める必要がありました。しかも、開発に使える実機は本番用の1台のみ。壊したら展示会に出せなくなるという状況で、一つひとつの動作確認に相当な緊張感がありました。そこで導入したのがアジャイル開発とテスト駆動開発(TDD)です。機能追加とテストを短いサイクルで繰り返すことで、常に安全な状態を保ちながら開発スピードを上げていきました。

K.H.

無線化の難しさは、単に通信方式を変えるだけでは済まないところにあります。展示会場では他の出展者も同じ周波数帯を使う可能性があるため、電波の干渉でロボットの動作が不安定になるリスクがありました。実際の工場環境であれば自社でコントロールできる部分も、大規模な展示会場では予測がつかない。そうした不確定要素を含めた設計を短期間で仕上げなければならないのは、かなり神経を使う作業でした。

M.K.

実機が1台しかないというのは本当に大きな制約でした。本番用の外装カバーがついた状態ではテストできない場面もあり、新しい機能を試すときには「カバーを外してダミーに付け替えさせてください」とお願いすることもありました。通常の開発のようにトライ&エラーを気軽に繰り返せる環境ではなかったので、シミュレーションや机上検証で精度を上げてから実機に反映するという慎重な進め方が求められました。前のチームで使っていたシミュレーション環境の構築経験が、このとき地味に役に立ちました。

CHAPTER 04

展示会を前提とした開発は、通常の受託開発とはどのように違いましたか

F.H.

根本的に違うのは、ゴールが「仕様どおりに動くこと」ではなく「見た人に未来を感じてもらうこと」だった点です。通常の開発であれば、お客さまの課題があって、それを解決するシステム要件が明確に存在します。しかし今回は「人とロボットが協調する世界観を伝える」というコンセプトが先にあり、具体的な仕様は走りながら固めていくスタイルでした。正解が一つに定まらないぶん、チームで目線を合わせることが重要で、自分としては、豊田自動織機がこの展示を通じて何を伝えたいのか、その背景や思いをできるだけメンバーに共有するよう心がけていました。

M.K.

コンセプトが固まりきらない段階から開発を進めていくのは初めての経験で、最初は戸惑いもありました。ただ、手を動かしているうちに少しずつ全体像が見えてくる。「わからないことがわからない」状態だったのが、ある段階から「自分が何をわかっていなかったのか」が整理できるようになり、そこから先は課題への向き合い方が変わりました。ゴールが明確な開発では得られないプロセスで、振り返ると一番の学びだったと思います。

K.H.

判断基準が定まらない時期は正直もどかしさもありましたが、その中でも手を動かし続けたことで、曖昧な状況下でも前に進める力がついた実感があります。仕様が固まってから着手する従来の進め方とはまったく違うアプローチで、エンジニアとしての引き出しが確実に増えた経験でした。

CHAPTER 05

本プロジェクトを通じて得られたものを教えてください

F.H.

「自分たちの挑戦領域に限界はない」という確信を、チーム全員で共有できたことが一番大きかったです。これまでにも豊田自動織機の研究開発部門とシステム要件の分析段階から一緒に仕事をする機会はありましたが、今回はさらにその上流にあたるコンセプトを形にする段階から深く関わることができました。TIISには最先端のモノづくりの構想段階から挑戦できる環境があることを、社内外に示せたプロジェクトだったと思います。

M.K.

自分が携わったソフトウェアが展示会で動くという体験そのものが初めてで、素直に感慨がありました。このプロジェクトに入る前はモデルベース開発が中心で、ロボット制御やモーター制御は未経験の領域でしたが、限られた期間で実機を動かすところまでやりきる必要があったぶん、日々の密度が濃く、短期間で一気にスキルが底上げされた実感があります。ここで触れたオドメトリやモーター制御の技術領域を、もっと深掘りしていきたいという気持ちが、今の原動力になっています。

K.H.

わからないことだらけの環境に放り込まれて、それでも前に進めたという事実が、自分の中で確かな自信になっています。開発期間中は全力疾走で、学んでいる実感を持つ余裕すらなかった、というのが正直なところですが、新しい領域に踏み出したいと思って転職を決めたので、まさに求めていた環境に飛び込めたという手応えがあります。

F.H.

付け加えると、今回のプロジェクトで「価値共創パートナー」としての仕事の進め方をチームで実践できたことも大きな収穫です。顧客から言われた仕様をただ実現するのではなく、プロジェクトの真の目的は何かを常に問い続け、自分たちは何をすべきかを主体的に考える。また、私たちはソフトウェア担当ですが、動作確認にはフレームの組み立てや配線といったハードウェアの知識も欠かせません。担当領域の壁を作らず、製品全体にチーム全員で関わっていく。このマインドがチームに根付いたことは、次のプロジェクトにもつながる財産だと思っています。
  • TIISさんはソフトウェアに関する知見が非常に豊富で、頼もしい存在です。LEANでは一つのロボットに多くの機能を盛り込む必要がありましたが、ソフトウェア全体の構成やアーキテクチャの設計で的確にベースを作っていただきました。私たちが「こんなことをやりたい」と、まだふわっとした段階で相談しても仕様検討のところから一緒に考えてくれます。今後はこれまでとは違った領域のシステム開発にも一緒に挑戦したいと考えているので、お互いに切磋琢磨していける関係を続けていきたいです。

    株式会社豊田自動織機 Aさま

  • LEANのプロジェクトではかなり短い期間で仕上げなければならず、難易度の高いタスクが山積みでした。その中でTIISさんがいつも近くにいて密に連携できたことが、プロジェクトを成功に導いた大きな要因だと感じています。私自身、今回のプロジェクトで担当範囲が広がり、ハードウェア側の取りまとめとして成長できた実感があります。TIISさんにはまだまだ見せていただいていない技術の引き出しがたくさんあると思うので、新しいプロダクトをまた一緒に世に送り出していけたらと期待しています。

    株式会社豊田自動織機 Mさま